薬剤による糖尿病
薬剤による糖尿病(薬剤性糖尿病)とは
病気の治療に必要な薬の影響で血糖値が上がり、糖尿病の状態になることがあります。これを「薬剤性糖尿病」または「薬剤による糖尿病」と呼びます。
薬によってインスリンが効きにくくなったり、インスリンを分泌する力が低下したりすることが原因です。もともと糖尿病になりやすい体質がある方では、薬の開始や増量をきっかけに高血糖が明らかになることもあります。
血糖値を上げることがある主な薬
代表的なものには次のような薬があります。
- ステロイド薬
- 一部の免疫抑制薬
- 一部の抗精神病薬
- 一部の抗がん薬
- その他、血糖値に影響する可能性がある薬
特にステロイド薬は、膠原病、呼吸器疾患、皮膚疾患、がんなど、さまざまな病気の治療に使用されます。内服薬や点滴だけでなく、使用量や期間によっては注射薬、吸入薬などでも血糖値への注意が必要になることがあります。
薬を使用したすべての方が糖尿病になるわけではありません。薬の種類や量、使用期間に加えて、年齢、体重、糖尿病の家族歴、これまでの血糖値などによって影響は異なります。
薬を自己判断で中止しないでください
原因と考えられる薬があっても、ご自身の判断で減量したり中止したりしないでください。
ステロイド薬や免疫抑制薬、抗がん薬などは、もとの病気を治療するために欠かせないことがあります。急に中止すると、病気が悪化したり、体調を大きく崩したりする可能性があります。
当院では薬を処方している医療機関と連携し、もとの病気の治療を続けながら安全に血糖値を管理する方法を検討します。
このような方はご相談ください
- 薬を開始または増量してから血糖値が高くなった
- ステロイド治療中に高血糖を指摘された
- 健康診断や他院の検査で血糖値・HbA1cが高かった
- 尿糖が陽性になった
- のどが渇く、水分を多く飲む、尿の回数が増えた
- 疲れやすい、体重が減った
- 糖尿病予備群や境界型といわれたことがある
- 血縁者に糖尿病の方がいる
- 入院中は血糖値が高かったが、退院後の検査を受けていない
薬剤による高血糖は自覚症状がないことも多いため、薬を開始・増量した後は必要に応じて検査を受けることが大切です。
強い口渇、多尿、吐き気、嘔吐、腹痛、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、重い高血糖の可能性があるため、早めに医療機関へご相談ください。
ステロイド治療中は食後の血糖値にも注意します
ステロイド薬による高血糖では、朝の空腹時血糖値がそれほど高くなくても、昼食後から夕方にかけて血糖値が上がる場合があります。
そのため、空腹時血糖値だけでは状態を十分に把握できないことがあります。薬を使用する時間や量を確認し、必要に応じて食後や午後の血糖値も測定します。
薬の開始直後など、血糖値が急に上がった場合は、HbA1cにまだ十分反映されていないこともあります。血糖値とHbA1cの両方を確認して判断します。
当院で行う検査と評価
当院では、次のような点を確認します。
- 使用している薬の種類・量・開始時期
- 今後の治療予定や薬の増減予定
- 血糖値・HbA1c
- 腎機能・肝機能・尿検査
- 体重や血圧
- 糖尿病の家族歴や過去の健診結果
- のどの渇き、多尿、体重減少などの症状
必要に応じて血糖自己測定を行い、薬を使用する時間帯と血糖値の変化を確認します。状態によっては、持続グルコース測定器を用いて一日の変化を詳しく調べることもあります。
当院では血糖値とHbA1cを院内で測定できるため、当日に結果をご説明できます。
治療は薬の種類と血糖変動に合わせます
治療方法は、血糖値の程度、原因となる薬の種類や使用期間、もとの病気の状態によって異なります。
食事の調整だけで経過をみる場合もあれば、糖尿病治療薬やインスリンが必要になる場合もあります。ステロイドの使用量が変わると血糖値も変化するため、治療薬の量をこまめに調整することがあります。
原因となった薬が減量・終了されると、血糖値が改善して糖尿病治療を減らせることもあります。一方で、薬の終了後も糖尿病が続く場合があるため、治療終了後も検査が必要です。
処方元の医療機関と連携して診療します
薬剤性糖尿病では、もとの病気の治療と血糖管理の両方を考えることが重要です。
当院では、日本糖尿病学会専門医・研修指導医が、薬を処方している医師と必要な情報を共有し、原疾患の治療を妨げない血糖管理を提案します。
受診の際は、紹介状、検査結果、お薬手帳をお持ちください。ステロイド薬については、今後の増量・減量予定が分かる資料があれば、あわせてお持ちください。
薬の治療中に血糖値が高くなった方は、お電話でご相談ください。
電話:092-852-7211
参考情報
※当ページは学会の公表情報を参考に、当院の診療内容に基づいて独自に作成しています。
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最終更新:2026年9月|医学監修:日本糖尿病学会専門医・研修指導医 野原 栄
